new makez-inu’s blog

長野県界隈で芝居やら弾き語りやら便利屋やらやってる「まけずいぬ」「池田シン」のブログです。

ぼくの刑務所日記その9

さて、久しぶりです。どこまで書いたっけ?と毎回自分のブログを読み返す負けズ犬です。

いよいよぼくの裁判が始まるわけですが、特にどうってことも無いんですね。今まで見ていたひとの裁判と一緒。

先ず真ん中の検事が例のノートをペラペラめくってぼくのページを探し出し、

「この薄汚いヤサグレ無頼の日本人は誉れ高き我がインド共和国の神聖なる法律を糞尿のごとく踏みにじり云々」

と、とにかくそんな様なことを言ってぼくを極悪人だと決めつけて怒りまくっているんですね。

そうすると我が弁護士様が

「いやいやこの者は我が国が世界に誇る伝統であるヨーガの行を習得すべくわざわざ遠く日本からやって来たものの、修行に没頭するあまり2年の歳月が流れたことにすら気が付かず云々」

ってなことを言っているわけです。これはこの弁護士がぼくに会うことも話を聞くことも無く勝手に作り上げたストーリーなんですが、ぼくが事後承諾でサインだけはしてあります。

本当のところ、ヴィザの切れる半年のちょっと前、ぼくはヴァラナシに居たんだけど、そこから一旦ネパールに出てヴィザを取り直そうかどうか迷ったんです。でもまぁ、面倒臭いし、出国のときに清算すればいいや、ということで無視したわけです。でもそんなこと言うと判事の心証を損なうのでこれは秘密です。

検事が喋り、弁護士が喋り、その間ぼくは例の柵の中に立っているわけですが、次に判事がぼくに何か質問しました。

「弁護士の言い分に間違いはありませんか?」

「ありません」

「もう二度とこのようなことはしませんか?」

「しません」

これでおしまい。この検事にも裁判官にもバクシーシが回っているんだろうなぁ、、、

というわけで、判決がこの場ですぐに言い渡されたのか、終わってから後で言い渡されたのか、覚えていないんですが、、、、

判決:

6ヶ月のヴィザで2年間インドに滞在。1年6ヶ月の不法滞在ではあるが、ヨーガの修行の為ヴィザが切れていたことに気付いていなかった。犯意は認められない、よって、罰金として200ルピー。処分としては国外退去を命ずる。

罰金200ルピーって、、、1ルピー3円としたら600円くらい。。。あれ? 記憶違いだったかな? 400ルピーだったかな? 

どちらにしても安いもんです。

この他に手続きとして、不法に滞在してしまった1年6ヶ月分のヴィザ延長料金を請求されたんだけど、 

「お金全然余ってませーん。ごめんなさ〜い!」

という書類をまた弁護士さんが書いてくれたので、これは免除になりました。こっちの方がけっこう高かったので助かったけど、この分が弁護士さんのギャラに上乗せされたのかな?

とにかく、そんなわけでぼくの裁判は終わりました。領事館員さんはニコニコで「よかったねー」、と喜んでくれました。

そしてぼくの持っていた帰国チケットの予約はすでに解約されていたんだけど、一番早い便を予約し直してくれました。確か、三日後くらいでした。そしてぼくはまた護送車で刑務所に戻され、三日後の飛行機の飛ぶ日まで、刑務所で滞在することになりました。

刑務所内で何年も裁判を待っている人達がいっぱい居る中、ぼくは一回目の裁判で結審してしまった。これが日本国の後ろ盾、バクシーシ(賄賂)の力、なんでしょうね。他の多くの囚人達は、2週間に一回裁判所に行って丸一日檻の中で待たされて、

「はい、今日はあなたの裁判ありませんでした。また次回の予約を入れて」

といってまた2週間後、ってなことをもう何年も続けているわけです。

国家。疎ましくもあり、有り難くもあり。ぼくは多くの場合、国民に犠牲を強いる国家。国民の犠牲の上に成り立っている国家。というものを意識しているのだけど、たまには国民を助けることもある国家。ぼくはその助けられたうちの一人です。

出所の日

鋼鉄の大きな檻の扉のこちらからあちらへ、あちらからこちらへ、出入りのたびに大きなノートに係官がいろいろ書き込みます。そしてぼくはこの大きな檻から外に出る。

「二度ともどってくるなよ」

と顔なじみになった所員に見送られる、ってのは日本の映画でありがちなシーンだけど、出所、ってのはやっぱり感慨深いものがあります。

外ではすっかり顔なじみになった領事館員さんとアシスタントの二人が車を停めて待っていてくれました。二人とも満面の笑み。まるで我がことのように喜んでくれています。ぼくは彼らに挨拶して、車に乗り込む前にまた振り返りました。

アリプール・ジェル。大きな鋼鉄の門。高い塀。ここで過ごした18日間。長かった様な短かった様な、、、

「何だか名残惜しい様な気がするなぁ、、、」

「そんなこと言わないでよ。大変だったんだから」

領事館員さんが笑って言いました。彼は実際、ぼくをここから出す為に大変な苦労をしてくれたんだと思う。それでもそんな風に笑ってくれる、人の好い笑顔にぼくはとめどの無い親しみを感じました。

-----------------エピローグ------------------------

この後車で空港に行ったんだけど、ぼくの載る筈だった飛行機が何故か半日くらい遅れてしまい、領事館員さんの必死の交渉にもどうしようもなく、バングラディシュでの乗り継ぎ便に乗り遅れ、次の便までの一週間、ダッカの町でお寺に居候したりして帰国。インド放浪の怪しい坊さん姿のぼくに麻薬犬がにじり寄り、荷物から出て来たバナナのヘタに目の色変える税関員。二年ぶりに帰った日本は女子高生が超ミニスカートにルーズソックスでケータイ持ち歩いてる別世界でした。

そしてこんな風に続いて行くわけです。